2010年3月20日土曜日

伊藤計劃さんの話をさせてください。

web上に存在する、彼について語られている関連エントリを見ていると、その多くが私にはとても綴ることのできないとても魅力的な文体で語られており、こんな私がその中にまじってここに書き留めておく、というのも非常に失礼なのでは…と思うのですけれども、web上の皆様、どうぞここに少しばかり綴らせていただくことをお許しください。


私が彼の作品に出逢ったのは、池袋のK-BOOKSだったと記憶しています。

MGSに夢中になって数か月、私はメタルギアの同人誌というのはどんなものなんだろう?という疑問の元、池袋のK-BOOKSに足を運びました。
中古同人誌コーナーで偶然手にすることの出来た二冊のメタルギアソリッド同人誌。
「チルドレン・オブ・ウォー」と、「国連ザンジバー活動」

私が生涯で初めて手にした、メタルギアの本でした。
すぐに購入させて頂き、自宅にて読了しました。

この二冊です。

そこには、知識・ストーリー・キャラクター設定全てが、私には表現することのできない物語で構成され、一つの作品となっていました。
「同人誌」とは?「ファン活動」とは?
私にとって、ファン活動の一環として「メタルギア」という作品を題材として扱わせていただく上で、多大な影響を受けた作品です。

「国連ザンジバー活動」の前書きにこうあります。(一部抜粋)
シリアスな物語に、突拍子もないギャグ。
世界情勢を反映した世界設定に、不条理な笑い。
この同居こそが小島作品の大きな特色ではなかったでしょうか。

私の話になりますが、私がMGSという作品のファン活動としてギャグ漫画を描いてみようと思ったきっかけは、この文章かもしれません。
どう文章にしたら伝わるのか分かりませんが、この同人誌を読んだ時に涙しました。

彼の「メタルギア」に対する深い愛情が、スネークやオタコンというキャラクターを通して痛いほど突き刺さってきたからです。


それから暫く、MGS4が発売するという話になったとき、公式サイトにて関連グッズの項目を読んでいると何やら見覚えのある文字列が目に入りました。

METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS 著/伊藤計劃
METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS
おすすめ平均
stars愛蔵版
starsゲーム未プレーのメタルギアファンの方へ!
stars単純にスパイ小説として面白い
stars素直に感動しました。
stars期待通りだった

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by G-Tools

あの、メタルギアの同人を書いていた伊藤さんが、公式ノベライズを手掛ける!
「チルドレン・オブ・ウォー」「国連ザンジバー活動」で彼のメタルギアへの愛は十分に感じていましたから、発表に驚きはしたものの安心して発売を待つことができました。
当時の私はMGS4発売と同時にPS3を所持しておらず(数カ月後に入手しました)、初めて触れたMGS4はこのノベライズでした。
その頃個人的に多忙で自宅でゆっくり読むことができず、それでも4の物語を知りたくて公共の場で読みふけることもしばしばありましたが、終盤にさしかかっていくにつれ、その「物語」と彼の表現の仕方に胸を打たれ、これ以上ない位号泣しました。
何度も何度も読み返し、その後実際にMGS4をプレイし、また読み返し、その表現の深さに感服したものです。


年が明けて、

訃報を最初に知ったのはtwitterでした。
当時のtwitterの自分のpostを見たら、恐らく「ご冥福をお祈りします」とか「信じられません」という、私にしては綺麗な言葉が残っているかもしれないけれど(もちろんそれも真実なのだけれど)、実際の私は放心状態で、何故?どうして?これは誤報?嘘じゃないの?という想いとともに、現実逃避の言葉ばかり口に出して、目をかっぴらいて彼のブログを初めて閲覧させていただいておりました。

そこで、まるで墓標のように刻まれていく最後のエントリへのトラックバックを見つめながら、部屋に戻り、ただただ彼の小説を読み返しました。
丁度、彼の小説「虐殺器官」を半分ほど読み終えた日だったので、はっきりと憶えています。
訳がわからなくなり、最後まで読むことなく一旦小説を閉じ、心が落ち着いた数日後にもう一度読み直しました。
「ハーモニー」も先日読了しました。

しばらくして、ふと彼のブログを閲覧させていただくと、過去に私が参加しているコミケに直参されていることに気がつきました。私が行っただろうスペースエリアで、彼はサークル参加をしていました。
もしかしたら、一瞬でも同じ会場で同じ空気を吸えていたのかもしれない。
当時の私はメタルギアのメの字も知らずに、それでも恐らく彼と同じように、コミケというひとつのお祭りを心から楽しんでいました。

もし私がもう少し早くメタルギアという作品に触れていて、
彼をこの目で見ることも、恐れ多くも声を掛けさせていただくことも、握手を求めることも可能だったかもしれない。
でもそうだったら、私の池袋K-BOOKSでの出逢いはなかったかもしれない。
・・いえ、自分のことはどうでもいいのです。

それでも、勝手な、一方的な話ではあるのですけれど、私に物語を授けてくれた伊藤さんに直接出会える機会があったのなら、また違った物語を手にする事が出来たかもしれない。
・・・『if』の話をしても、話は進みませんね。

伊藤計劃さんのブログで、一番心に残っている記事があります。(もちろん他にもこのMGSのエントリが面白いだとか、たくさんあるのですが、ひとつ。)

06-18, 2008 きみは弾丸を四発持っているbyフランク・ダラボン - 伊藤計劃:第弐位相


また、先日小島監督がtwitterにてこう発言されていました。(ソース
第30回日本SF大賞は伊藤計劃さんの「ハーモニー」です。今日はその授賞式。若くして逝ってしまった伊藤さんに変わって、御両親が壇上に上がられていました。 伊藤さんが亡くなってもうすぐ一年が経ちます。
既に叶わないのですが、伊藤さんにPWを最初に遊んで悦んで貰いたかったです。

私も彼のPWに対するなにかを綴った物語を、読みたかった。
感じたかった。目にしたかった。

彼から物語を受け継ぎたかった。



その気持ちをふまえて、これだけ。


伊藤さん。

あなたの物語は、今の私の一部を確実に成しています。

あなたの綴った物語は、私に大きな物語を受け継がせていきました。

わたしが誰かに初めて物語を語るとき、そこにあなたの物語は確かに存在しています。

どうかあなたのファンの一人として、ここに小さく、私にとっては大きく、どうぞ記させてください。

伊藤様、どうもありがとうございました。



2010年3月20日 コロンビア

◆関連エントリ
訃報